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平家物語

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目、口、手、足。映しすぎないことでより強調される見事な表現。沙羅双樹の花は赤い影を伴って落ち、沈む。カモメは1羽から2羽になり、天へ飛び立つ。多用される隠喩と画面の余白とが、視聴者を視聴者としてだけに留めまいと迫ってくる。私は山田尚子監督が本当に好きだ。

15年の歳月を11話でまとめているから時はズンズンと進んでいくが、それを語りはしない。過ごしている中の会話や行事、風景で表す。それが引っ掛かりなく、置いてけぼりにならない程度のバランスを保っている。このバランス感覚が何より凄い。

主人公のびわはオリジナルのキャラクターで、故あって平家に身を置く少女だ。元が『平家物語』だから、びわは視聴者が平家の人々を観るための視点的装置であるのだが、それだけに終始しない。びわ自身の背景があり、びわ自身の物語がある。『平家物語』であり、びわの物語でもあるというバランスが絶妙。

加えて言えば、『平家物語』は重盛の物語であり、徳子の物語であり、維盛、資盛、清経など、その時代に生まれ、生きた人々の物語である。大枠の中にある確かな個を掬い、“一族”ではなく“個々”の話として提示することで祈りは重みを増し、語り継がんとするびわの強さ、優しさは一層美しく映る。ひいてはこの物語を語り継いだ実際の琵琶法師さえも。

びわはそなたらに会って、そなたらを知った。

だから、見て聞いたものをただ語る。

 

平家物語』を観て『片喰と黄金』を思わずにいられなかった。

 

届かなかった祈り。戦ではなく飢餓による死。栄華を極めた平家と対照的な暮らしをしていたアイルランドの少女が、カリフォルニア・ゴールドラッシュに乗じて大富豪になるべく旅立つ物語だ。

力がないからなんだ、動くか死ぬかの二択、質素で平穏な暮らしなどで満足するものか!というびわとは違う方向の強さでもって破天荒にガシガシ進む。

栄枯盛衰なれば一陽来復もまた...やろがい!という気持ちで読んでいる。未完ゆえ。