美術館とストリップショー

 行ったので書く。

東京都庭園美術館

 当時開催中だった「1993年の室内装飾 朝香宮邸をめぐる建築素材と人びと」という展覧会がとても良いという話を聞き、キネマ旬報シアター柏で上映されていた「映画けいおん!」とどちらをとるか悩んだ末、こちらのほうが大学から近いという浅い理由で訪問を決めた。

www.teien-art-museum.ne.jp


 この展覧会の開催中は館内のほとんどが写真撮影可なのだが、撮影を忘れてしまうほどに見入ってしまった。正面玄関で待ち構えるモザイクタイルとガラスの女性像に圧倒されたのは私だけではないはずだ。公式サイトに

今回は、室内を構成する要素―木材や石材、タイル、壁紙、家具など―に焦点を当て、その素材や技法、携わった職人や企業について、当時の工事仕様書やカタログ等の資料から解き明かすことを試みます。 

と書かれているように、室内を構成する要素すべてが見どころであった。雰囲気を感じ取ってもらえるように表現すると「何気なく視線を落としたとき視界に入るドアノブまでもが美しい」という感じだ。また、それら要素についての解説が随所にあるため、順路通りに一周すると、その知識を持ってもう一周したくなるという時間が無限に溶ける構造である。無論、それらの説明書きを読まずとも十分楽しむことができただろう。
 おそらく、ここに人が住んでいたというのは嘘だ*1。ましてや1930年代前半といえば、世界恐慌の只中で労働争議や小作争議が続いていた頃である。まさに住んでいる世界が違うといった感じで、小市民である私には内装を見ても生活が想像できなかったし、吉田茂が肉厚の椅子に座っている写真は失礼ながら笑ってしまった。

 残念なことに現在この展覧会は終了しているが、今回行けなかった人は是非次回の建物公開展に足を運んでほしい。ストレス解消、健康増進、進捗促進、美肌効果などの効能がある。また、東京都庭園美術館のコレクションページも幸福度が高いため、こちらもおすすめする。ちなみに私はルネ・ラリックの電動式置時計《野ばらの花》が好きだ。
www.teien-art-museum.ne.jp

ストリップシアター渋谷道頓堀劇場

 東京都庭園美術館が上の世界すぎたため、なにか俗なものが欲しくなり訪問を決めた。この劇場では学割が設定されており、2000円で入ることができた。

www.dotonbori.co.jp

 私が訪問したのは第1回公演*2が開始される約10分前だったのだが、最前列は既に満員で、 年齢層は主に50代以降、女性客はいなかった。

 演目内容を詳述することはおそらく歓迎されないためざっくり説明すると、出演者が曲に合わせてダンスをし、徐々に衣装を脱いで最終的には裸体で色々なポーズをとるというものだった。ただ、一連の流れが決まっているだけで、そのテイストは出演者によって異なっており、中にはストーリー性のある一人芝居のような印象を受けたものもあった。

 私のストリップに対する当初のイメージは、集客目的で裸体になりステージ上でウッフンアッハンするだけのものだった。そういう人も確かにいたが(2/3はそうだった)、しかし、想像していたエロさ(アダルトビデオ的なエロさ)とはまた違うエロさ(椎名林檎的なエロさ)を持ち、肉体によって何かを表現しようとしている人もいて、それらは他の一般に受け入れられている演芸と遜色の無いものであったように思う。

 ただ、そのような芸術的だと感じられた人でさえも、ストリップという枠組みにいる以上、おそらく免れ得ないであろう余計な時間があった(オー◯ンショー)。これを目的に来場する客もいるのだと思うが、しかしその前のショーが芸術的であるがゆえに、その不要さが際立っていた。ストリップ界隈はこのような演者と枠組みの方向性の相違をどのように見ているのだろうか。

 ダラダラと書いたが、ストリップショーを始めてみた感想を簡潔にまとめると「殆どの人がエロくなく、エロかった人はアダルトビデオ的なエロさではなく椎名林檎的なエロさだった」ということになる。特段おすすめはしないが、もし足を運ぶのであれば人気ストリッパーを検索したほうが良い。観客の中にはショーの合間に資格試験のテキストを読んでいる人やショーの最中に最前列で眠りこける老人などもいるため、気軽に足を運べる場ではあると思う。

 

*1:嘘ではない

*2:公演は1日4回あり、一度入れば退出は自由