はなしが散らかった

4月から社会人になるため、最近日雇いの人足生活を始めた。これからは月給制という悠長な生き方になってしまうため、今のうちにその日暮しのような生活をしたいと思ったのである。 

苦役列車 (新潮文庫)

苦役列車 (新潮文庫)

  • 作者:西村 賢太
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2012/04/19
  • メディア: 文庫
 

人足生活というと、どうしても西村賢太の『苦役列車』がちらついてしまう。ああいう生活に憧れがあるのは確かで、全くそれに影響されていないというのは嘘になるが、しかしそうでなくても、抱えているものを放り出してその日暮らしをしたいと思っている人はわりと多いのではないかと思うし、私もその一人だ。なんならホームレスになりたい気持ちもあるし、そういう感情を現実に落とし込んだ結果家を出るみたいなところもある。

生きるという目的のために負担を排除していく感じはミニマリストと言っても差し支えないのではということで、人に説明するときは「ミニマリズムに感銘をうけたので家をでます」と説明している。

「技術の進歩によって人々の職が奪われる」という話をよく耳にする。現在絶賛奪われ中だと思うが、今後も単純な作業から奪われていくのだろう。現在はまだ、機械のかゆいところを人間がかいてあげるといった具合で荷役などが行われているが、これもそのうち全自動になるはずだ(知らんけど)。何の話かというと、つまり倉庫内軽作業ができるのは今だけだということだ。将来の心配をしつつ、期間限定の品や安くなっているからという理由で要らぬものを買ってしまうタイプの人は、早くその無駄な思考を放棄して期間限定の倉庫内軽作業に従事すべきだ。ピラミッドの当時の建築方法を現代では経験できないのと同様に、近未来では倉庫内軽作業は経験できないかもしれないのだから(?)。

 

負担の軽減という話と若干つながるが、先日自室に散乱していた本や漫画を選別し、古本屋にぶん投げた。単純に引っ越す際に持っていく分を選別したという理由もあるが、それ以上に、読み返しもしない本で部屋を圧迫しているのは正気じゃないと気付いてしまったことが大きい。

その中で、中村文則の文庫をどうしようかと迷ってしまった。というのも、私が思うに彼の作品は『何もかも憂鬱な夜に』以前と以降とで、作風というか雰囲気が違うのである。私としては以前のほうが好きで、たまに読み返すのは毎回そちらであった(読み返しやすい厚さというのもある)。そのため、読まないものは投げれば良いのではということになるのだが、同じ作家の書いたものである以上通底しているテーマは同じだったりするから、そのうち読み返したときに新たな気付きなどがあるかもしれない、などと考えてしまうのである。

悩んだ結果、これは段ボールを捨てられないタイプの人と同じ思考だなと思い至り、一度投げてしまおうということになった。残ったのは『何もかも憂鬱な夜に』以前の作品だ。

何もかも憂鬱な夜に (集英社文庫)

何もかも憂鬱な夜に (集英社文庫)

 

こうして、なんやかんやで部屋の本や漫画はかなり減ったわけだが、その数日後になんと太宰治の文庫版全集を頂いてしまった。

太宰治全集 全10巻セット (ちくま文庫)

太宰治全集 全10巻セット (ちくま文庫)

 

古本屋から頂いた新品の全集で、投げた本の買取価格兼就職祝い兼引っ越し祝いとのことだ。やはり文庫版でも全集が本棚にあると嬉しくなる。いつか書簡や日記の収録された完全版も揃えられたらいいなと思う。

文庫版全集を頂いたことで、これまで何度も読んだ新潮文庫版の太宰作品が実質的に不要となったのだが、これは思い入れが違うため保管することにした。もはや歴史資料のような様相を呈していて、歴史ですねといった感じ。

 

歴史というか時の流れの早さを感じるものとして、最近だと『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』が放送されていて、まどマギ放送当時を思い出したりしている。ちなみに、同年(2011年)には『映画けいおん!』や『八日目の蝉』『SUPER8』などが上映されていたらしい。他では、私が読んだ最初で最後のブーン系小説『先生の戦う生徒指導のようです』などもある。これは本当に苦行なので是非読んでほしい。

 

最近は映像作品にあまり触れない生活をしている(マギレコとドロヘドロは観ている)。観始めればズルズルと何時間も観るのだろうが、観始めるまでがしんどい状態だ。そして結局『天気の子』を観ていない。一度観ようと映画館まで足を運んだのだが、財布と買ってあった鑑賞券を家に忘れたため帰宅した。

ただ、『M-1グランプリ2019』の決勝において、かまいたちがそれを自慢に変える術を教えてくれたため、私はなんだかもう『天気の子』を観ていないことが誇らしい。かまいたちはネタだけで見れば、芸人の中で今一番と言っていいくらい私の中でキている。

今回のM-1最終決戦で披露した「トトロを観たことがない」ネタも、前回のM-1で披露した「もしタイムマシンがあったら」というネタも、はじめは首を傾げてしまうような主張が、山内のそれっぽい論理と真顔とで、確かにと頷いてしまう。タイムマシンに関してはもう山内は正しい。

そんなかまいたちのネタで一番好きなのは「万引き」だ。

残念ながらこの動画ではこのネタの一部しか観ることができないのだが、ここだけでもかなり面白い。自身に不利な“言った”という事実を誤魔化すために、“客観的に見て自分が言ってるっぽい”とあえて一部を肯定する姿勢。言い訳をするなら「断じて俺は言ってない。他の誰かが万引きの現場を見てたのかもしれんな」などと言えば良いものを、咄嗟のことで頭が変に回転し、上手く言い訳しているつもりが全く機能していないという可愛さ。それに対する濱家の「最後の言葉さえ言わんかったら助かると思ってる?」というツッコミも最高だ。「トトロ」や「タイムマシン」で見せた相手を頷かせる論理ではなく、こねくり回した論理から焦りが窺えるという、人間心理の面白さとでも言いたくなる素晴らしいネタだ。

 

ところで話は戻るが、近いうちに一人暮らしを始めるため、生活に余裕のあるみなさんから新居祝いなどもらえたら嬉しいなと思っている。タオルとか。こんなんなんぼあってもいいですからね。